ああ、なんか、やばいかも。
そんな漠然とした不安が現実になって襲いかかってくるのに、そう時間はかからなかった。
それは、ロングホームルームが終わって、帰り支度を始めたときのこと。
中島くんを視界に入れないように気をつけながら荷物をつめていたら、教室の前扉の開く音がした。
だけど、顔を上げたら中島くんの方を向くことになるからと、そのままカバンに目を落としていたら。
「はのん、まだいるかな」
聞き慣れた声が飛んできて、ドキッとした。
直後、教室中がシン…と静まり返る。
顔を上げざるをえない状況。
会長の登場に、みんな慌てたように後ずさり、道をつくる。
遼くんが私に気づいた。
「よかった。今日は仕事もないし、一緒に帰ろうかと思って」
クラス中の目線が刺さって痛い。
隣を見ると、無表情の中島くん。
再び前を見ると、こちらに歩み寄ってくる遼くん。
さっきの今で、この組み合わせ。
何が起こるか、気が気じゃない。
そんな私の視界を、ふと、金髪のリーゼントが遮った。
それは、隣の席になるはずだった浦本くんで。



