……な。
何様なの………。
って思っても言えなかったのは、中島くんの周りに急に黒いオーラが見え始めたから。なんだか怖くなった。
ただ笑ってるだけなのに、なんでだろう。
──────逆らえない。
本能的にそう感じてしまう。
いやいや、意味分かんないし。
ひるんだ自分を誤魔化すように頭を振った。
「なにバカなこと言ってるの」
強気でいこうと睨んでみたら
「まあ見てなよ」
余裕な態度で受け流される。
“ 中島くんに好きな人を知られた ”
それがどれほど大きな意味をもつのか。
クラスメイトひとりに知られたくらい別に、って。すぐに開き直ることができればいいのに。
クラスの中を見渡してみればわかる。
ざわざわと声を抑えた雑談は飛び交っているけど、大声で喚いてる人も、完全に教卓に背を向けている人も、席を立ってる人も漫画雑誌を広げている人もいない。
この不良校では、こんな光景は少しも当たり前なんかじゃない。
クラスによっては無法地帯だ。
先生たちから見れば、いい意味で明らかに浮いている。
思い出した。今年の組替えの日、私はこのクラスになれてよかったと心から安堵したんだった。
だけど、この環境に慣れてしまって見落としていた。
このクラスをこうしたのは中島くんだ。
にこにこと笑っているだけに見えるのに、ヤンキーばかりの集団をいとも簡単に統べる。
ぞくっとした。
今、私の隣にいる人は
このクラスの支配者なんだって──────。



