なにを怒ってるのって?
「自分で引っぱっておいて、そんなこと聞くの?」
「ちげぇよ。 その前から怒ってたろ、お前」
「中島くんと隣になっちゃったからじゃん。しかも、彼女とか嘘つくし」
「俺はべつに彼女なんてひとことも言ってない。浦本が勝手に勘違いしてるだけ」
謝るそぶりは少しも見せない。
自分は悪くありませんというように、理屈で対抗してくる。
「中島くん、そうそう、とか言って肯定してたじゃん」
「席代わってもらうための口実としては都合がよかったからな」
堂々とそんなこと言えるの、すごいと思う。
煙草をバラされたくないからって、私の気持ちも考えずに嘘ついて、隣になって。
「自分勝手。せめて、彼女ってところは否定してよ……。ていうか、いいかげん離して……っ」
1番後ろの席だから周りに見られることはないといえ、この態勢は恥ずかしい。そして、屈辱的。
「結局、上月が1番怒ってるのってソコなわけ?」
口調をやや丁寧に戻して、でも手の力は緩めずに聞いてくる。
「……ソコって?」
「俺の彼女って思われてんのが嫌ってこと?」
黒い瞳がまっすぐに貫いてくる。



