椅子を机の上に乗っけて持ち上げる。
引きずってる人と持ち上げてる人は、半々くらい。


教科書が入ってるから少し重たいけど、私の移動距離は短くて済むから一息で定位置まですすんだ。


──────そして。





「よっしゃ、隣が女子とかラッキー」



顔を上げた先には、リーゼント風の金髪くん、こと、浦本くん。


話したことはあんまりない。
イカツイ見た目。
だけど、気さくで話しやすそう。




なにより、中島くんじゃなくてよかった〜と胸をなでおろした。

……のもつかの間。





「てか、あれだよな。上月さん、きのう琉生と抜け出してたよな」


「え、抜け出してた……?」



なにその誤解めいた言い方。





「上月さんのこと俺も可愛いなーって思ってたんだけどさ、琉生の彼女だったら諦めるしかねぇのかな」



か、彼女?!

私が中島くんの彼女。

びっくりしすぎて、本当に目が飛び出るかと思った。





「あの、私、中島くんとは──────」


誤解を解こうと見上げると、もさもさした金髪君の肩を、ふいに、誰かの手が後ろからつかんだ。






「そうそう。だから、席代わってくんない? 浦本 」