「とは言っても、こんな男子ばっかりのクラスじゃねぇ。イケメンって言えるの、中島くんくらいだし」
中島くんの名前が出てきて、少しそわっとした気持ちになった。
昨日抱きしめられかけたこととか、あの優しすぎる低音ボイスを思い出して。
うっかり流されそうになった自分にムカムカする。ぜんぶ、作り物だってわかってるから、あれほど腹が立つことはない。
「ミカちゃんは彼氏いるのにイケメンイケメンって……」
中島くんのことには触れずに呆れ顔をつくった。
「イケメンは正義だから〜。ほら、ジャニーズをかっこいいって思うのと、彼氏を好きって思うのは違うでしょ」
「それは、まあ……」
ジャニーズにはまったことはないけど、言ってることはわかる。
「だからね? 中島くんは誰もが認めるイケメンだけど、イケメンだって思うのが好きに結びつくわけじゃないでしょ? 結局、はのんにとっては遼くんが1番かっこいいでしょ?」
「う、うん。わざわざそんな例あげなくてもわかってるし、わかってるから……」
声をひそめてミカちゃんを止める。だって、ここは教室の中。
中島くんもいるんだから、聞かれると色々とまずい。