そう思って踵を返したら、ぐいっと乱暴に首根っこをつかまれて、後ろに引っ張られた。
「うぐっ」とヘンな声が出る。
「ちょっ、何す─────」
振り向いたとたん、今度は肩をつかまれて、みるみるうちに後ろの方へ追いやられた。
そして、バンッという音が聞こえたかと思えば、それは私の背中が壁にぶつかる音で。
じん…と痛みが広がるやいなや、
「もう、ほんとにお腹痛くない?」
優しい響きが鼓膜を揺さぶる。
体を寄せられる。
中島くんの脚が、あたしの股下に入り込んでくるから、後ろにも逃げられず、かがむことも許されず。
「また体調が悪くなったりしたら、俺に言いなよ。……ね?」
くらっときた。
目眩みたいな。
状況が理解できないまま、中島くんにのまれそうになる。
こんな乱暴に壁に押し付けておきながら、優しい言葉を吐いてくる。
「いきなりどうしたの?」と見上げると、視線が絡んで。
じっと見つめられたかと思うと、ゆっくりと距離が近づいた。
ドクン、と胸が鳴った。
ハッとして、顔を背ける。
「やめてよ…っ」
叫ぶと、中島くんは静かに手を離した。
「お前が、俺らしくないとか言うからだろ」
片頬だけを釣り上げて、小さく吐き捨てる。