廊下の真ん中で、立ち止まる。


そのセリフ。
聞きたかったのに、首を横に振ることしかできないなんて、やっぱり悲しいな。



好きなのに、隠さなきゃいけない。自分の気持ちに嘘つかなきゃいけない。


もう、遼くんに気持ちは残ってないんだって─────。





「どうして? あのとき俺が浮気してたって、やっぱりまだ疑ってるの……?」

「ううん。遼くんはそんなことしないって、もうわかってるよ」



「じゃあ、なんで……」

「恋としての、好きじゃないって、気づいた……から」




お腹よりも、胸のほうが痛んだ。

嘘だよ。

遼くんが好き。大好き。



そんなに傷ついた顔、しないで。




「じゃあ、今度こそ振り向かせる」



目を伏せて、遼くんは小さくそう呟いた。


そんなことしないでって思う。
だけど、私のことずっと好きでいてほしいって思う。
矛盾してる。




「遼くんとは、ずっと友だちでいたい」


ずるいかな。
友達だったら、ずっと一緒にいても許されるって思ってるのは。



だって遼くんは、私が “ 彼女 ” としてそばにいたら、絶対幸せになれないから──────。