「はのんは知らないほうがいいよ。そして、関わらないほうがいい、危ないから」




危ないって何?

聞き返そうとして、結局声に出さなかったのは、遼くんが珍しく険しい表情をしていたから。

口元を固く結んで、何か深く、考え込んでるみたい。




「少し例を上げると、街角で、血だらけで喧嘩してたって話を聞いたことがある。中学では、いつも鉄パイプ振り回してたとか……まあ、あくまで噂だから、本当のことはわからないけどね」




想像して、ゾクッと寒気が走った。

それが本当なら、不良……を通り越して、極悪ヤンキー。




「それに中島、ひとり暮らしみたいだし、家庭環境も……」



言葉を区切る遼くん。

少しして、やっぱりいいや、と首を振る。
そして。




「ところでさ、あの話、考えて直してくれた?」



柔らかな笑顔と、優しい声。
でも、いつもより控えめな話し方。




「あの話って……?」


私はわかってるくせに、とぼけてみせる。

その話題に関して、あまり意識してる素振りを見せたくなかったから。
それと、遼くんの口からちゃんと聞きたいっていう、わがままな気持ちがあったから。





「ヨリ戻そうよ、俺たち」