……好き

って、今すぐ伝えたくなる。


こんなタイミングで言うことじゃないってわかってるのに。



中島くんが離れていっちゃうのが嫌で、そっと袖口をつかんだ。



「……なんだよ」


のぞきこんでくる。


近い。

あつい。

言えない。



黙っていたら、指先が伸びてきた。



「……あんまり、可愛い顔するな」


甘い囁き。


目の前がふっと暗くなる。


まだ、好きって言ってないのに……。

でも、逃げられない。

触ってほしいって思ってしまったから。



ちゅ…と優しく触れたのは

唇じゃなくて

ほっぺたあたり。


名残惜しそうに、ゆっくりと離される。



「唇ははずしたから、許してよ」


いたずらっぽくそう言って

中島くんは目を伏せた。