この土地のことはよく知らない。
繁華街といっても、広くて、いろんな建物があって、たくさんの人がいて。
こんなに無鉄砲に飛び出したところで、簡単に見つかるわけはないのに。
わかってるのに体が勝手に動いてしまう。
会いたいって、痛いくらい心が叫んでる。
────中島くん。
────中島くん。
息を切らしながら、繁華街に続く道の角を曲がったとき
数10メートル先に、その背中を見つけた。
本当に見つけられるなんて思っていなくて、一瞬幻かと思った。おもわず目をこするけど、あの柔らかなそうな黒髪も、立ち姿も、間違いなく中島くんのもの。
────だけど、両隣には女の子がいた。
会えた、という高揚感は、すぐにしぼんで重苦しい落胆にかわる。



