「仲良くないよ、ほんとに。……ただ、たまたま声掛けてくれて」
「……たまたま」
「う、うん。ほら、中島くんってみんなに優しいから、周りのことよく見てるんだと思う。昨日も……スカートのこと、教えてくれたりとか」
「……そっか」
スカートのファスナーについては中島くんのついた嘘だし、キスを奪った相手を褒めるなんて、本当は不本意。
でも、中島くんと一緒にいたのは断じて仲がいいとかではないし、私に向けられた優しさも、普段みんなに与えてるものと同じなんだって、遼くんには分かってほしかった。
ひとことで言えば、“誤解されたくない” から。
「中島は成績もいいし、周りからの人望も厚い。……だけど、悪い噂も裏では回ってるから、気をつけて」
ふと、遼くんが声のトーンを落とす。
「悪い噂?」
一昨日の出来事が頭に浮かんだ。校舎裏で、隠れて煙草を吸ってた中島くん。
二面性があって、まだいまいち掴めない彼の噂とは。



