思い出した。 あの日言われたこと。

“ 本当の俺を探してよ ”

そのあとすぐ、冗談めいて笑っていたから
あまり気にとめていなかったけど。



「だから琉生は変わらないものを求める。自分のことが分からなくなっても、好きなものがあることで、これが自分だって実感できるから。……だからコーラも、ただ美味しいからってだけじゃない。たぶんね 」



息をするのが苦しくなった。

そんなこと知らなかった。

軽薄で、嘘つきで、最低なんて言ってしまった。


本当は優しいことも知ってるのに。



「あの……、中島くんは、たった5分くらい前に出ていったって言ってたよね」

「ああ、うん」

「どこに行けば会えるかな……」

「えっ?」



考えるより先に、扉の方へ足が動く。



「たぶん、繁華街あたりをうろついてるんじゃないかな」

「っ、ありがとう。 お邪魔しました……っ」



お辞儀をして、外へ駆け出す。


奥の方で引き止める声がしたけど無視した。