ドクン、ドクン

心臓がうるさい。


中島くんが、好きな人に────。


そんなことありえるの？

だって、さんざん可愛くないって言われたのに。



「でも、中島くんは……」

「琉生は昔から、大事なものができたときには距離を置こうとする癖がある」

「えっ？」



私の言葉をさえぎってそう言ったホンダくん。



「そうしないと、手放せなくなるんだって。軽い依存体質みたいなもので、琉生はそれを自分でわかってる」


…依存体質？


「そうなったのも、育った家の環境のせい。 琉生の父親は小さい頃から流生にいろんなことを強要して、自分の思いどおりに動かないと暴力をふるうような人だった」


それってつまり……虐待。

体が震える。



「生まれたときから当たり前だったから、流生はそれが普通じゃないことを分からずに育った。ぜんぶ、父親の思い通りにつくられて……だから、本当の自分がどんな人間なのか分からなくなったんだと思う───」