最後まで、顔、見れなかった。
中島くんの背中が見えなくなると、遼くんは心配そうに私の顔をのぞきこんで「体調悪いの?」とたずねる。




「うん……ちょっと、お腹痛くて」

「そうだったんだ。ごめんね、呼びだしたりして。保健室に付き添うよ」


「でも、生徒会の仕事……」

「他の人にやらせるから大丈夫、心配しないで。ほら、行こ」




にこっと微笑んで、さりげなく私の手をつかんだ。
やっぱり優しい。
それに甘えて、身体を寄せる。今はこうしていても、変に思われないからラッキーだ、なんて考えて。


だけど、同じように優しい言葉を掛けてくれた中島くんを思い出すと、もやもやとした気持ちが胸の中をうずまき始めて、罪悪感が芽生えた。



あんなにあからさまな離れ方をしなくてもよかったかも、とか、お礼くらい言えばよかったかも、とか。




「昨日も、はのん、中島と一緒にいたよね」



前を見つめたまま、遼くんがぼそっとつぶやいた。


遼くんが中島くんのことを「中島」って呼び捨てにしたことに違和感を覚えつつ、なるべく触れられたくない話題だったから、ひとまずは「う……」とお腹をおさえて、聞こえないふりをする。



でも、遼くんは私に答えを求めていたようで、



「いつから仲良いの?」

と、今度ははっきり口にした。