わかったとうなずいて教室をでる。

中島くんのことが気になったけど、あえて見ないようにした。




「時間ないから、ここでいい?」


遼くんが足を止めたのは、比較的ひと気の少ない廊下の片隅。

いつもみたいに、ニコニコと優しい笑顔は、そこにはなくて。




「……俺、2位だったよ」




─────えっ?

予想もしていなかった言葉に動揺して声も出なかった。

……ということは。



「あいつと、デートするの?」


心臓が大きく跳ねる。

嘘。ほんとうに?



「……行かないで」

「えっ?」

「今まで余裕あるフリしてたけど、中島にはのんを取られると思うと、焦って、何もできなくなる」



遼くんの手が伸びてきて背中にまわる。

この感じ……すごく懐かしい。




「そのくらい、はのんのことが好きなんだ」


遼くんが私に触れる手つきはいつも優しい。


────中島くんみたいに強引じゃない。


ふと、目の前に影が落ちた。

視線が絡む。


……あ。この感じも、知ってる。

なんて、どこかぼんやりとした頭で考えた。


唇がそっと重なる。



遼くんのキスは

───中島くんよりも、ずっと優しい。