後ろから飛んできた声で我に返って、そのまま振り向く。


そこには遼くんの姿があったから、中島くんと密着してるのを見られたのが恥ずかしくて、勢いよく体を離した。



それはもう、ものすごいスピードで。


あれだけお腹が痛かったくせに、よくこんな俊敏に動けたものだと自分でもびっくりするくらい。




それから、遼くんの元へ、まっすぐにダッシュ。




胸の誤作動を誤魔化したくて、中島くんのことを頭から離したくて、深く考えもせずに遼くんに抱きついた。





「っ、どうしたの、はのん。遅いから、迎えに来たんだけど……」



中島くんの目の前で抱きついてしまったことに気づき、ハッとして体を離す。





「……ま、待たせてごめんね。すぐ行くね」




弱々しい声が出た。

うつむくと、中島くんの足元が見える。

顔を見るのがなんとなく怖くて、視線をあげることができなかった。




ズキンとお腹が痛んでまたうずくまりそうになったけど、どうにか耐えた。

沈黙が続いて気まずい空気になり始めたのを、中島くんの静かな声が破る。




「会長さん。その子、体調が悪いみたいなので、今日は休ませてあげてください」




完璧な優等生モードでそう告げると、くるりと背を向けた。