「そーいえば、堺井に言ったから」
突然、なんでもないことのようにそう言われて、一瞬血の気が引いた。
「言ったって……まさか、」
「堺井に勝ったら上月とデートするって」
「……ええっ?」
なんだそっちか、ってホッとするも、驚きは隠せない。
「それ、わざわざ言う必要ある?」
「ある」
「なんで……」
「嫌がらせ」
「えっ?」
「上月、俺とデートするって堺井に知られるの嫌だろ」
……なにそれ。
「中島くんて何考えてるかわかんない」
「わかんなくていい」
バサッと切られる。
「ていうかっ、勝てるわけないじゃん……遼くんは全国模試でもトップクラスなんだよ?」
「お前、頭いいヤツが好きなの?」
「はあ? なんでいきなりそんな話になるの」
噛み合わない会話。このままじゃキリがないと思ったとき、ミカちゃんが自分の席から私の名前を呼んだ。
立ちあがる。
背中を向ける前になんとなくもう一度
中島くんに目を向けると
なんだか浮かない表情をしていた。