睨もうと思って、下から控えめに見上げたら、中島くんの顔が予想よりもずいぶん近い位置にあった。

近すぎて、焦点が合ったりぼやけたりをくり返す。

少し動けば、唇がふれてしまいそう。



中島くんの目に、目を丸くした私が映ってる。

そんな中島くんもまた、まばたきもせず、少し驚いた顔をして私を見ていた。




立ち上がるのも忘れて、数秒間見つめ合っていると、しばらくしてドクドクっと不整脈みたいな音が鳴った。


中島くんの視線から逃れるようにして、あわてて俯く。


今のなに?



お腹が痛いせいか、頭もあまり回らない。

こんな体勢をしてると、抱きしめられたこととか、キスされたことを思い出してしまう。恥ずかしいし、悔しいし、優しくてきもちわるいし、お腹痛いし。

全部が相まって、涙がにじんだ。



泣いてるわけじゃなくて、雫がほんの少しだけ溜まるくらい。それが溢れて落っこちたりとかは絶対にしない量。


あくびをして、すこし目がうるうるしちゃう、あの程度。





「……上月、」


中島くんの唇がそう動いた、直後。




「─────はのん」