喧嘩が強くて、ゾクに入ってる不良とは思えない綺麗な字。
見た瞬間、ドクドクッと心臓が妙な音をたてた。
「……へ、へんなことしないでよっ!」
無意識に声を荒げてしまう。
「はあ? なんで怒んだよ」
「っ、だって……中島くんが優しいと気持ちわるいんだもん」
正直な気持ち。
いつもの口の悪い中島くんのほうが、わかりやすくて好き。
「人の親切をなんだと思ってんの」
ほっぺたをぐいっとつままれる。
痛い……けど
やっといつもの調子。
いつのまにか、こんなやり取りも悪くないかもって思えてくるから不思議。
「上月って、どこもかしこも柔らかいよな」
「ええっ……なにそれ。太ってるってこと?」
「そうじゃなくて。前も言ったけど、ちょーどいいって意味」
ふと視線が絡む。
思ったよりも近かった。
ドキッとする。
なぜか咄嗟に逸らしてしまった。
「ねえ上月。 デートしよ」
……って。またその話?
「1回断ったよね」
「保健室で優しく付き添ってやったのは誰?」
「う……」
好きな人がいるのに私とデートしようとかいう思考は相変わらず理解できない。
……けど。
考えるより先に、どうしてか
「いいよ」
なんて言ってしまった。
ハッとして慌てて付け加える。
「……こ、今度の中間テスト、遼くんに勝てたら……いいよ」