背を向けて歩き出すと、タイミングよく
「琉生〜、メシ食うぞメシ」
って、周りの男子から中島くんに声がかかる。
ああ〜よかった。これで完全に解放された。
そう思ったのに。
「あー……ごめん。先食べてて」
そう言うやいなや、廊下に出た私を追いかけてくるからびっくりする。
周りの目を気にしなくてよくなった中島くんは、「待てよ」って乱暴に腕をつかんだ。
「何なの……急いでるんだけど」
そう口にしたとたん、お腹に刺すような痛みが走った。
お寺の鐘を鳴らす棒でガーンと突かれたみたいに、重く鈍く響くから、
立っていられなくなってその場にうずくまる。
「おい、上月……」
「大丈夫」
強がってみたけど、あまりに痛すぎて動けない。
中島くんがしゃがみこんで、そっと背中に手を回してくる。
「ほら見ろ……言わんこっちゃない」
うるさいよって手を振り払おうとしたのに、その声がびっくりするくらい優しかったから、ちょっとだけ思考が停止してしまった。



