空気が動いて、甘い香りがふわっと漂う。
抱きしめられたわけじゃないのに、どうしてか熱を感じた気がして。
それは自分の体温があがってるからなんだって分かると、ドクッと心臓が動いた。
「それ脱いで」
「え?」
「今すぐ制服に着替えろ」
「っ、でも……」
まだ仕事中で。
そんな反論もできないくらい、中島くんはイラついた表情をしている。
「ていうか。なんでいきなり着る気になったわけ。男寄ってくるの分かってんだろ」
きつい口調。
「隙が、マジで多すぎるんだよ、お前……ほんと、イライラする」
……なんで、そんなこと言われなきゃいけないの。
私だって好きで着たわけじゃないのに。
憧れはあったけど、自分に似合うかどうかは別問題で。
それでも、人手が足りないって言われたから、自分なりに頑張ってみようって思って。
ミカちゃんにメイクしてもらって、ほんの少し自信がついて。
それなのに中島くんは、お世辞でも “ 可愛い ” なんて言ってくれない。 似合ってるとも。
それどころか、怒ってくるんだもん。
意味わかんないよ……。



