「えっ? ちょ、どこに……」


背が高い中島くん。早足で、さらに1歩が大きいせいで、ついていくのに必死。
小走りするしかない。

ロッカーの手前でいったん足を止めたかと思えば、中からジャケットを取り出してまた進み始める。

教室を出た。



「ねえ、まだ仕事中なんだけど……!」


途中で放りだしていいはずはない。

それなのにズンズン進んでいく。


仮装パーティーみたいなにぎやかな廊下をすり抜けて。
中島くんに気づいた人が声をかけても、女の子からの熱い視線を受けても、ぜんぶ無視して。



たどりついたのは西階段、1階の壁際。

少しくぼんだ空間があって、人目をはばかることは出来ないけど、これで波に押される心配はなくなった。


手を離した中島くんが私と向かい合う。
うさ耳フードを外すと、不機嫌な顔があらわになった。



「やっぱ着せんじゃなかった」


そうつぶやくと、片手に持っていたジャケットをばさっと広げて、私の肩にかけた。