背中にはりついていた私はそっと正面に回り、顔をのぞきこんでみたけど
うさ耳フードを深くかぶった中島くんの表情は影になって読み取れず。

ただなんとなく、穏やかではない空気を感じる。


殺気立ってる?
怒ってる?


今は話しかけないほうがいいかなと思いつつも、助けてくれたんだからお礼を言わなくちゃと遠慮がちに声をかけた。



「あの、ありがとう」

黒い瞳がやっと私をとらえる。



「やっぱり中島くんてすごいね。名前聞くだけで相手がひるんじゃうんだもん」


この前もそうだった。
駅の近くで絡まれたとき、一瞬で片付けてくれた。

見た目は、そんなに強そうに見えないんだけどな────



「上月、ちょっと来い」


……って。

思った瞬間、腕を引かれる。