私を隠すように前に出る。


「あ? なんだテメェ」

相手の眉間にしわが寄った。

とてもマズイ状況。


中島くんが強いのは知ってるけど、こんなところで喧嘩が始まってしまえば文化祭が台なしになってしまう。



「変な着ぐるみ着やがって」

中島くんの胸ぐらをつかんで低い声を出す。

すると────



「……よせ」

うしろに立っていた連れの男子が肩をつかんでそれを制した。



「こいつ、たしか黒蘭の中島琉生だ」

それを聞いたとたん、男は声をあげずに仰け反り、怯えたように目を逸らす。

くるりと踵を返して教室を出て行った。


周りの緊張した空気もとけて、次第ににぎやかさが戻っていった。


ただひとり、中島くんだけが黙ったまま動かず────。