無視して、遼くんにメッセージを返そうとスマホに向き直ったら、ひょいっとそれを奪われた。
「ちょっ、返してよ……」
手を伸ばすと、届かない高い位置まで持ち上げられる。動くのはなるべく控えたいのに、こっちの気も知らないで。
「生徒会室よばれてるんじゃん」
「……そうだよ、今から行くの」
「気分悪そうなのに?」
「悪くないよ」
「嘘つき」
「……中島くんの顔見てたらお腹痛くなった」
男子に、生理だなんて恥ずかしくて言えない。
悪態をついても、中島くんは周りに人がいる教室ではニコニコ爽やかスマイルを崩さない。
「もう行くから、スマホ返して」
「無理しないほうがいいんじゃない? 体調悪いなら断りなよ」
「大丈夫だもん」
遼くんに会えばきっと治るから。
それに、ここにいて中島くんに絡まれるより全然いい。
心配してるふりをしてるだけで、この笑顔も優しい言葉もどうせ全部ニセモノなんだから。
席を立って中島くんの腕をつかんだら、意外にもあっさりスマホを離してくれた。



