「人足りねぇーんだからしょうがなくね?」
「でも、上月はだめ」
「中島の気持ちはわかるけど、」
「俺が接客やる。二人分がんばるから、だから上月は───」
すると、中島くんの周りを数人の男子が取り囲みはじめた。
「何言ってんだ、お前ぜってぇー女装とかしないっつってただろ。そもそも琉生は呼び込み担当だから外せねぇよ」
「そーそー。貴重な女子を琉生君の顔で釣らないでどうすんのって話」
たしかに中島くんのルックスなら、文化祭に来てくれた女の子たちもキャーキャー言いながら寄ってくるに違いない。
「中島くん、私、もうやるって決めたから」
そっと声をかけると、何が気に入らないのかムスッとした表情で見おろしてくる。
「勝手なことしやがって」
距離をつめて、私にだけ聞こえる声でそう言った。
「なに偉そうに。メイド服着るのに中島くんの許可がいるの?」
口論になることを覚悟して言い返したけど、中島くんは返事をせずに、そのまま背を向けて教室の中に入っていった。
すっごく感じわるい。
せっかく接客することに前向きになれていたのに、中島くんのせいで、また最初の重い気分に戻ってしまった。



