ポケットから出てきたものをよく見ると『禁煙キャンディー』と書かれていた。

これって、煙草吸ってましたって言ってるようなもの。ポケットなんかに入れて、見つかったらどうするのって呆れた気持ちになる。




「袋開けて、食べさせて」

「ええっ……」


どうしてそんなお世話まで焼かなくちゃいけないの!



周りをキョロキョロ見渡して、人目がないことを確認する。
だけどそれじゃ不安がぬぐえなくて、誰の目からも完全に死角になる位置まで中島くんを押しやった。


太陽も当たらない薄暗い場所。



「ほら、さっさと口あけてよ」


するとなにがおもしろいのか、中島くんは薄く笑って。



「大胆だね」

「はあ? 中島くんが食べさせろって言ったんじゃん」

「こんな場所に連れ込まれると、ちょっと興奮する」



バカバカしい。


「遼くんに見られて、ヘンな誤解されたくないだけだし」



袋の端をピリッと破る。



「うん、知ってるー」


そう言った中島くんの口に丸いアメ玉を押し込んだ。



一瞬だけ指先が唇に触れて

わずかに濡れた感触にドキリ、とする。



顔が熱くなって、とっさに手を離すと
「どーしたの?」って、ニヤリと笑うから。


──────絶対わざとだ。

そう思わずにはいられなかった。