忙しさは悩みを忘れさせてくれる。


文化祭に向けて本格的に準備を始めた生徒会は、朝から放課後までバタバタとせわしない。


やることが多すぎる。



今朝も早く学校に来て、各クラスから出た予算をまとめたり、大量の印刷物をホッチキス留めしたりと目まぐるしく動き回った。



朝礼前に教室に入ると、ミカちゃんが「お疲れ様ー」と声をかけてくれる。




「あっそういえば! ねえ、聞いてよ」

「うん、なに?」



ミカちゃんは、周りの目を気にしながら耳元に口を寄せてくる。




「中島くんは近くにいないよね」

「中島くん?」



仕事が終わって、教室まではいっしょに来たけど、今は浦本くんたちと楽しそうに会話をしてる。




「中島くんがどうかした?」


首をかしげると、ミカちゃんはなにやら神妙な面持ちになって。





「あたし見たんだよ」

「見た? なにを?」




まさか……。

とっさにタバコが頭をよぎってヒヤッとした。

だけど、やめるって言ってたはず。




「昨日の放課後、あたし彼氏とたまたま中央区に遊びに行ったんだって」


「……うん」


「そしたら見ちゃった。……中島くんがめちゃくちゃ可愛い女の子と歩いてるとこ」