中島くんがクラスの輪の中に戻っていったあと、今朝のことを少しだけ思いだした。


遼くんのこと、中島くんのこと。




──────もしも “ あの出来事 ” がなかったら、私はいまも遼くんと付き合ってたのかな。


ぼんやりと考える。

……ううん。遅かれ早かれたぶん同じ。




私は遼くんと結ばれてはいけない。

あのときじゃなくても、それはいつか気づくこと。
悲しいほど、思い知らされる……。




中島くんにバカだと言われた。

“ 付き合うから別れるんだよ ”




今朝は気にも止めなかったセリフが

なぜか今になって

胸に重くのしかかってくる。



付き合わなければよかった?

付き合わなかったら、ずっとそばにいれる?

本当にそうなの?




“ ほんとーは、してほしいとか思ってんじゃないの ”


────ちがう。

軽い人は苦手。



……だけど。


中島くんは上書きしてくれる。

そばにいると、悲しい記憶が薄れていく気がする。



……遼くんを忘れるために利用してる?

雰囲気に流されそうになるのは、無意識に都合がいいと思っているから?




なんのためらいもなく触れてるあの手は、本当はきらいじゃないのかもしれない。