自習と言われて、はいわかりましたと大人しく勉強をする人なんてこの学校にはほとんどいない。
だけど、中島くんが廊下を歩けばその周りは自然と静かになり、みんなは一歩退きながら軽く頭をさげる。
そんな中、
「お、中島どこ行ってんの?」
金曜日の打ち合わせで一緒だった人物───たしか灰田くん───が教室の窓から顔をのぞかせた。
「あれ、言ってなかった? 生徒会入ったんだよ俺」
灰田くんは目をまるくした。
「冗談だろ」
「ほーんとだって」
な?と私を見て確認をとる中島くん。
うなずくと、なぜか頭にポンと手を乗せてきて
「上月、ちょっと先行っといて」
「えっなんで?」
「いーから」
「……わかった」
おそらく灰田くんになにか用でもあるんだろう。
私にとっては好都合。
これで遼くんに勘違いされずに済む。
よかったと胸をなでおろしながらふたりに背を向けた。