なんだか慣れた手つきでリボンを直してくれて、そしてそれな私が結んでいたリボンよりも綺麗に見えてちょっと微妙な気持ちになった。
男子って、たいていリボンとか結べなさそうなそうなイメージだし。
ほどけてるのに気づいたとしても、ここまで器用に結べる人ってなかなかいないと思う。
それって制服のリボン、触り慣れてるからなのかな……。
さすが女の子と遊んでる男は違うね、って心の中で皮肉を言うと
それから間もなく、電車が近づく音が聞こえてきた。
「この電車?」
うなずく。
じゃあね、と背を向けようとしたら手首をつかまれた。
「上月。 俺タバコやめる」
「えっ」
「だからお前がこれ捨てて」
握らされたのはライターと煙草の箱。
突然渡されて戸惑ったけど、もう電車の扉が開いてしまったから返すこともできず。
「え? あ……うん」とあいまいな返事をして背を向けた。
乗り込む直前にもう一度うしろを見ると、中島くんは既に階段を下りようとしていて。
しばらく見つめたけど、姿が見えなくなるまで目が合うことはなかった。