なに? ともう一度聞き返そうとしたら、掴まれていた手が離されて
どこか寂しい気持ちがのこった。



寂しいというのは違うかもしれない。

もどかしい。




心のどこかで小さくくすぶっていた“ 誰かに話したい ” という思いに火がついてしまったから。

中島くんならあっさりと「そんなことか」って受け止めてくれそうだと一瞬でも思ってしまったから。



思わずシャツの裾を引っぱってしまったのは、たぶんそういう理由。





「……なに」

「なんでもない」


「なら、手離せよ」

「……っ、ごめん」




拒否されたのは予想外だった。だっていつも、自分からベタベタ触ろうとするくせに。

少し傷ついてる自分が、とても弱い人間に思えてきて悲しくなってきた。

一度 あのことを思い出してしまうとどうも心が脆くなる。



だれかにすがりたくなる。
だれかに甘えたくなってましまう。


だけど私は
中島くんの言うとおり可愛くない女だから





「なんですぐ不機嫌になるの」



なんて、棘のある声が出てきてしまう。