中島くんが私の腕をつかんで自分の方に強い力で引きよせた。
「……危なっかしいな」
「っ、ごめん。 ありがとう、ございます」
「動揺しすぎだろ」
「……う」
余計に近くなってしまった。
「今みたいな質問には軽く返しときゃいいだよ」
軽くってなに。
どう考えても軽い気持ちで答えられる質問じゃないと思うんだけど。
「しょ、じょ…って言ったらバカにするんだ」
「しねぇーよ」
「じゃあ……違うって言ったら?」
……ふと、中島くんなら “ あのこと” を、受け止めてくれるんじゃないか。
そんな気がして、なかば無意識に聞いてしまっていた。
緊張のドキドキが加速する。
だけど相手は答える気配がない。
恥ずかしくなって「やっぱ今のナシ」って笑顔をつくりかけた。
「……ろす」
「えっ?」
あまりに低い声だったから聞き取れなかった。



