ゆっくりと目を逸らしながら歩き始める。
続きは帰りながらってことなのかな。



そう思いながらあとに続いたけど、中島くんは何も言わないまま歩き続けて、階段を下りて。
結局、お互い無言のまま昇降口まで着いてしまった。



電気は消えていた。

玄関の外の屋根についてる蛍光灯だけがチカチカ光ってる。




錆びた靴箱。

開くとギイイって耳障りな音がする。



取り出したスニーカーを高い位置から落とした中島くんと、薄暗い中で目が合った。




「なあ」



私はローファーにつま先を入れながら「なに?」と返事をする。






「はのんて処女 ?」




……なんて?



聞こえなかったわけじゃない。
ただものすごく動揺して、心臓が早鐘を打って、中島くんの目を見つめたまま言葉が出なかった。



思いのほか距離が近かったから、とりあえず離れようと足を引けば、グレーチングの穴にかかとが引っかかってよろけてしまう。