「勉強してたの?」
「うん」
「それ難しそう」
「まあ国公立の過去問だし。 けどもう2周したし、新しいのほしーな」
そう言って組んでた手を上に伸ばすと
「疲れた」
やけに色っぽい笑顔を向けてくる。
「上月、癒やして?」
「は……」
「大丈夫。誰もいない」
このねだるようなあざとい表情を私はつい最近見たことがある。
たぶんこの男、母性のくすぐり方を知り尽くしてる。
ほっぺたあたりに伸びてきた手をやんわりと拒否した。
「ダメなの?」
「当たり前でしょ」
「減るもんじゃないよ」
「だからそういう軽いの……」
「嫌いなんだよな。知ってる」
パッと私から離れると、真顔に戻り、何事もなかったかのように荷物をつめ込みはじめる。
なんだかおもしろくなさそうに見えたから、機嫌を損ねてしまったのかもしれないと不安になったけど。
私のせいじゃないし。恋愛観の違いだし。
「モテるんだから、他の子に頼めばいいじゃん」



