「ねえ、中島くん……ってば」
壁のおかげで私の体はこれ以上後ろに下がることはないから、あとは両手で胸を押し返すだけ。
ところがびくともしない。
「離れてって。女関係だらしないといつか痛い目みるよ」
「誰がだらしないって?」
「中島くんしかいないじゃん」
「冗談だろ」
すっとぼけてみせてもだめなんだから。
私ちゃんと聞いた、知ってるもん。
風邪ひいたら看病してくれる女の子がいっぱいいるんだもんね。
テキトウに引っかけるってことは誰でもいいってことでしょ。
「俺にべったりされてると、はのんちゃんが都合悪いってだけだろ」
「なに?」
「勘違いされたくないもんな? りょーくんに」
「っ、今はそういうこと言ってるわけじゃ……」
ことあるごとに遼くんの名前を出してくるのは反則だ。
相手はこれで弱みを握っていると思っていて。
実際にペースを乱されてるから、これじやあ、ますます有利な立場に誘導してしまうだけ。
「ほら。あいつの名前出すとすぐ赤くなるだろ……」