あまりにも低く、冷たく響くから
おもわず背中がゾクッとした。
いきなり北極圏にワープしちゃったんじゃないかってくらい。
黒い瞳に囚われる。
近すぎて、ほんとにキスされるんじゃないかと。
心臓が警報のように早鐘を打ち始める。
ふと目を伏せた中島くん。
長いまつげが影を落とすと、とたんに表情が憂いを帯びて見えるから不思議。
再び視線が絡んだときには、もう冷たさは残ってなくて。
ねだるように見上げてくる瞳は
どこか熱っぽい──────。
「上月」
「……なに?」
「だめ?」
「なに……が」
わかってるくせに、とでも言うように
人差し指を私の唇にそっと当ててくる。
どうして、いつのまに
こんな流れに……。
私、油断してた?
「……だめだよ」
「断わんないで」
言ってることめちゃくちゃだ。
これだから慣れてる男子っていやだ。
からかって何が楽しいの。
「中島くん、まさかコーラで酔ってる?」
この甘ったるい雰囲気を壊すつもりで、あえて冗談っぽく明るい声を出した。
「酔ってるよ」
中島くんの腕が首の後ろに回る。
「でも、俺が酔ってんのは上月だけ」