ほっぺたは解放されたけど、手首はまだだった。
容赦なくギリギリとつかんでくる。
冗談にしてはけっこう痛い。
力加減ってもの知らないのかな。
「中島くんは女の子に慣れてるだろうし、大したことじゃないんだろうけどね、私は──────」
最後まで言い終わらないうちに、つかまれていた手首が、突然手前に引っぱられた。
甘い香り。
コーラじゃない、中島くんの匂い。
煙草吸ってるくせに、なんでこんなに甘い匂いがするんだろうって思う。
「もういい」
「えっ?」
「その話もういいから」
「中島くんが聞いてきたんじゃん」
「上月がバカ正直に答えるからだろ。 中身が恥ずかしすぎて聞いてらんねぇー……」
なんて失礼な! と言うつもりで顔を上げた
……けど。
思わず息を止めたのは、綺麗な顔が予想よりもはるかに近い位置にあったから。
「……そのうるせぇ口、塞いでやりたい」