吐息混じりの低い声で囁いた目の前の人物は、ただコーラを飲んだだけなのに謎の色気を放っていた。
しわのない白シャツを上のボタンまでしっかり留めて。
髪も染めず、ピアスもあけず、上履きの踵を踏みつけることもせず。
優等生を絵に描いたような模範の身なりをしているのに、少しも堅苦しく見えないのはなんでだろう。
……って、そうじゃなくて。
今中島くんが飲んだの、私のコーラじゃん。
この前もそうだったけど、こういうの気にしない人なの?
「……間接キス」
ぼそっと呟いてみれば、キャップを閉めた中島くんがゆっくりと視線をこちらに寄こして。
「俺だけならいいでしょ」
「おれだけ?」
「上月に、またこれを飲めって言ってるわけじゃないし。 ……もうカラだけど」
つまり、中島くんは私のものに口をつけたけど、私が中島くんのものに口をつけるわけじゃないから……と。
なんだか急に生々しい話だけど、そういうこと。



