甘えるような声。
思わず胸が動かされかけたけど、下から見上げてくる瞳は私を試しているようにも見えて。
「私、まだご飯も食べてない」
「そんくらい我慢できるだろ」
「やだよ。中島くんは今すぐ家に帰って休んだほうがいい」
「だから帰らねぇーって」
「ワガママ言わないでっ」
身を乗り出して、ベッドの上に手をついた。
中島くんがビクッと動いて
それからゆっくりと口角があがる。
「だから、近いって。 上月」
トーンの落ちた声が耳元で響く。
「あのさ、さっき言ったこと嘘」
「嘘?」
「誰でもってわけないから。少なくとも俺は 」
突然何を言い出すんだろう。
今は、帰る帰らないの話をしているのに。
だけど掠れた低い声が、やけに心地よくて
耳を傾けてしまいたくなる。
するとふいに、中島くんの手が伸びてきて、指先が私の髪をやさしく掬った。
「熱あるときくらい、甘えさせてよ。
……ね?」
髪に触れていた手が離れ、そのまま首元に移動する。
すぐに反対の手も回ってきて、長い腕が背中の後ろで組まれたのが分かった。
ぐっと力がこめられて、斜めにバランスを崩した私の体。
気づけば中島くんの腕の中。
鼻先が中島くんのシャツにあたってる。
ムスクみたいな甘い匂いでいっぱいになった。



