紙コップを口元に持っていき、喉に流し込む中島くん。 ゴクリと喉仏が上下する。
「近付かないほうがいいって……。保健室に迎えに来いって言ったの中島くんじゃん」
「そうじゃなくて。必要以上に近寄ったりとかって意味な」
水を飲むだけで絵になる中島くんは、ラスト一気に注ぎこんで、空になった紙コップをくしゃりと潰した。
「移るの心配してくれてるの? それだったら私は大丈夫だよ。 小学校以来、風邪ひいたことほとんどないし」
これは本当。
インフルエンザにかかったというのも、小学1年生のときの話。
あの時のことはよく覚えてる。
「上月ってヘンなところ鈍いよね」
視線を斜めにそらし、なぜかため息をつかれた。
「呼んだ俺が言うのもおかしいけど、熱のせいでけっこう危ういわけ」
「危うい?」
「理性ってもんが、あんま機能しないってこと」
「……、はあ」
なるほどわかった。
保健室に男女二人きりというシチュエーション。
少女漫画で見たことある。



