「万が一、遼くん本人に知られちゃ大変だから、言わないでって言った。……だから、……その、中島くんの機嫌をとって、黙っててもらおうって……」

「……」



後半はちょっと苦しまぎれ。
初めから欠いた情報を伝えているから、果たしてこれで納得してもらえるのか不安が残る。




「中島くんて、人の弱みを利用するような人だったんだ」


意外だという目でミカちゃんが見つめてくる。



「あの……ね、私が自らパシリになったんだよ」



パシリなんて自虐的で、そして大げさなことを言ってしまったけど
おかげで話の終着点が見えた。




「そっかー。 はのんも大変だよね。 好きな気持ちがバレないようにって……頑張らなきゃいけないんだもんね」



同情っぽく笑ってみせたミカちゃんは、時計をちらりと見て。「ちょっとトイレ」とその場を離れた。



一人残された机で考える。



元々は私が弱みを握っていたはず。
それを中島くんは握りかえして。

対等と言えば対等のはずだけど、どうも中島くんには逆らえる気がしない。



熱で弱ってるからって、甘い判断だったかな
と思いながらも、触れた体温を思い出すと

秘密なら秘密でいいんじゃないかと思えてきた。

中島くんと私、ふたりだけの問題だから。