「あれは、ホント、違うんだって……。ほら、熱があったから何かに掴まってないと足元フラついちゃうから」

「でもこの前からやたらと距離近いよね」

「そんなことは……」



──────あるけど。
だって、キスなんてゼロ距離。


甘く濡れた唇の感触を思いだした。




「とにかく違うから……」


否定の言葉を再度口にすると、目の前にふと、ミカちゃんじゃない人の影が現れた。




「なあ中島どんな感じ? 」


浦本くんがそわそわした様子で聞いてくる。



「熱があって」

「何度」

「えっと、38度、4分」

「やべぇじゃん。そんで、帰ったのか?」

「いや……午前中は保健室で休むって。午後から、よくなったら授業に出るつもりなのかも」



あの熱で良くなることは考えにくいと思うけど。
マジかあ、と頭をかく浦本くん。




「中島って頑張り屋なんだよな」

「そうなの?」

「いや違うか。自分のことに淡白? 鈍い? なんていうんだろうな……きついとか言わねぇでギリギリまで平然としてんだよ。だからいつも、いきなり倒れる」



案外、体が弱かったりするんだろうか。