「琉生って名前、かっこいいね」
去り際に、たいして考えるでもなくさらっと出てきたセリフ。
頭の中で思うまま、直接声に出ていたらしい。
るき。
多くはない名前だと思う。
名は体をあらわすと言うけれど
確かに
綺麗な容姿をした中島くんに、やけにしっくりくる名前だと感じた。
かっこいいね、に対しての返事はなく。
その代わり
「はのん、」
と黒目がちの瞳が見上げてくる。
一瞬、また呼び捨てにされたのかと思ったけれど、どうやら違うらしい。
「……って、ひらがな?」
「あ、うん」
「ふうん。めずらしーね」
「うん。 初対面の人にはよく聞き返される。 由来は……音楽に関係する用語? らしくて……私はあんまり詳しくないんだけど」
お母さんがつけたらしい。
といっても、音楽をやっていたわけでもないらしく
ただ単に響きが可愛いからだとか。
「俺は好き」
「えっ?」
「はのんって名前」
弱っている中島くんから出てくるセリフが、今日はやけに素直。
「いいんじゃね。 お互い、カタカナが似合う名前ってことで」