「俺の名前、知らない?」

「いやっ、知ってる。知ってるけど」

「じゃあ言ってみて」



言葉をさえぎり、そんな要求をしてくる。




「……るき、くん」



次の言葉がくるまで、間があった。

クラスメイトが呼んでいたから知っているには知っている。
そうじゃなくても、中島くんはこの学校の有名人だから。


それなのになぜ名前を聞いたのかというと、漢字が曖昧だったから。

そう。私の言葉が足りなかったせい。




「わかってんじゃん。 なら、書けよ」

「そうじゃなくて、漢字がわからなくて。……えっと、流れる? で合ってる?」



ああそういうことかと、納得した様子の中島くん。




「ちょっと違う」

「なに?」

「サンズイじゃなくて、オウサマの王」

「……ああ。わかった」



ペンを動かす。



「たしか、“ き ” は生きる、だよね」


なかしま、るき ーー中島 琉生。



これでいいよね? と確かめるつもりでボードを返して中島くんに見せた。


頷いたのを確認して、今度こそと立ち上がる。