「何度だった?」
手元をのぞき込む。
表示されていた数値は
「38度4分……やっぱり高いじゃん。もう家に帰ったほうがいいんじゃない?」
「やだ。 帰りたくない」
まるで、門限を過ぎてもまだ遊び足りない子どもみたいな言い方。
本人が帰りたくないというなら、大人しくベッドで休んでもらうしかない。
「じゃあ、お大事に」
そう言って立ち上がると
「もう行くの」
なんて、少し甘えたような声が引き止める。
「これ書き終わったし、私は、授業あるし……」
答えながら記入用紙に目を落とす。
すると、一番大事な名前を記入する欄が抜けていることに気づいた。
「あっ待って。名前忘れてた」
「名前?」
「ここ。学年と、中島くんのフルネーム書かなきゃ」
もう一度椅子にすわり直した。
今日の日付と。
学年は、2年。
名前は────。
「中島くん」
「なんですか」
「下の名前は……」
たずねると、はあ?というような
呆れた表情が向けられる。