土手ではお父さんと子どもがキャッチボールをしている。





家ではきっとお母さんが夕飯を作って待っていて、なかなか帰らない親子を迎えにエプロン姿で家から出てきてしまうんだ。




そんなことを考えてしまう優はきっと本の読みすぎだった。




冷たい風が優を包み込む。





白い息を吐き、寒さに耐えようと肩があがる。





そんな風と同時に、薄紅色のマフラーがふわりと飛んできた。




運がいいのか悪いのか、そのマフラーは優に絡みつき、手元に落ちた。






そして遠くからはそれを追いかけて走ってくる見覚えのある少女が一人。





「ごめんなさーい」






さっき図書館でお母さんに手を引かれていた子だ。





向かってくる少女の目に、もう涙はなかった。





「風で飛んじゃって・・・それ、私のです」