まだ集中しきれていない読み始めたその時だった。



一人の女の子が涙を拭きながらお母さんらしき人に手を引かれて入ってきた。





身長と顔立ちは大人びてはいるものの、泣いている姿、手を引かれている姿で同じ年くらいかと推測できた。




「ここじゃない・・・」





女の子は涙をこらえている様子はあるものの、溢れ出てしまっている。





早く本を読みたいのに、1ページ目から続きが気になるのに、優はその子から目が離せなかった。





「私の図書館はここじゃない・・・」





優しくなだめられてはいるものの、涙は止まらず、本も選ばず、その親子はすぐに帰っていった。




なんだったんだろう。




小学5年生ながらに気になる出来事ではあったが、優はすぐに本に夢中になった。





予定通り2冊読み終わり、1冊借りて門限に間に合うように図書館を出た。





日は暮れて、来た時よりも寒さを感じる。





マフラーに顔をうずめながら、本を片手に帰路につく。