花実は中学生になっても本を持って土手にやってきた。





小学生と中学生は終業時間が違うため、優に合わせて学校からそのまま来ているようだった。




「制服、似合わないね」






「優が中学生になった時、そっくりそのまま言ってあげるよ」





いつもの土手、いつもの時間、いつものように本の貸し借りをしていたが、優は花実の制服姿が嫌いだった。





小学生の時は感じなかった年の差を一気に見せつけられたような気がした。





生きている世界が違うような気がした。






必死にあがいて、こちらの世界に引っ張ってみる。






「友達、まだできてないの?」





花実が通っていた小学校の、区域外の中学に入学したのを良いことに、意地悪を言ってみる。





「それも、そっくりそのまま返してあげる」






「俺は、友達できるもん。今いる小学校の友達も、同じ中学に行けるし・・・」




6年生になって一人称を「俺」に変えてみたが、自分でも違和感が抜けきれていない。




意地悪に意地悪を重ね、言い返してはいるものの、優の自身のなさが下を向かせてしまった。