「これね、私がよく見る夢の話」




少しだけ、照れくさそうにこちらを見た。




「……そうなんだ。僕、好きな、話だ。僕の好きな、ファンタジーだ…」




優は思わずニッコリしてみせた。




普段あまり見せない笑顔に、花実は一瞬驚いた。




だけど、すぐに同じ笑顔をしてみせた。





「そうだ!今から虹を作ろう!虹の作り方、知ってる?」





返事も待たずに花実は駆け出した。





無意味に開いていた本を慌てて閉じ、優も急いで後を追った。





昨日も今日も天気は晴れ。





雨なんて、水っ気なんて全くなかった。





「待って、虹を作るのは夢の話じゃないの?どうやって・・・」





息切れしながら先行く花実に必死に声を掛けた。






着いたのは土手から少しだけ離れた公園の水飲み場。






花実は腕まくりをしながら、頭に「?」マークを浮かべた優を説明もなしに誘導した。





「太陽に、背を向けてごらん」





優は言われるがまま太陽に背を向けると、必然的に花実にも背を向けることになる。